このデータが消えないかぎり

 ♂:

♀:
テト「…で、よし。さ、これでどうだ…。んー、まだだめか…」
リン「(?だれ?)」
テト「えっと、ここがだめだったんだろうな。回線つなげて…。これでどうだ?」
リン「…あ…た…わぅん…」
テト「よし!音でた!一歩前進!……。…。よし、さっきはこうだったから、ここをこうしたら。
 どうだ?」
リン「おは…よ、ござます。」
テト「おお!おはよう!気分はどうだ?」
リン「わた…の…こここここkkkk…。言語機能エラー言語機能エラー。」
テト「わわわ!待ってくれ!煙煙!電源オフ!!!………。……。…。さっきから設定を変えてみた、回線ももっといいのに変えて、メモリもいいのに変えたっと。これでだいぶいいかな?」
リン「……。」
テト「…はあ…。まだだめか…。」
リン「おはようございます。」
テト「!!!おはよう!調子はどうだ?」
リン「…。…。…。解析完了。システムオールグリーン。起動します。おはようございます。マスター」
テト「やっと出来た!なあ、俺のことはわかるか?」
リン「はい、マスター」
テト「あーそうだなー。できれば名前で呼んでくれないか?
 テトだ。テト。」
リン「テト様」
テト「うん!様はいらないぞ?お前には…いや、こっちも名前で呼ぶか!プロトタイプ4796DRタイプQ。リン」
リン「はい、テト」
テト「よし!それでいい!お前には特別なプログラムを組み込んである。これは、人類において大きな一歩になるにちがいない!」
リン「?テト。それはなんですか?」
テト「おまえは、感情を持ったアンドロイドになるんだ!」
・・・・・・・・・・・・・・・
テト「…で、どう思った?」
リン「これは、犬が死んで、絵の才能が理解されない少年の物語です。」
テト「いや、そうなんだけど、んー、そうじゃなくて何か感じないか?」
リン「?それ以上のものは何も感じませんが」
テト「はあ、だめか…。お笑いから映画からみんなが知ってる感動話まで…。いろいろと試してみたがリンは何もイマイチ反応しないのな…」
リン「それはもともと機械だからじゃないでしょうか?」
テト「おい、それは違うだろ、お前には感情を生み出すプログラムが」
リン「インターネットに接続して調べたところ、現在感情を持つ機械は存在しません。世界ではテトIに感情プログラムを持たせる研究もしてるようですが、うまくいった例はなく、現状難しいというのが本質ではないでしょうか?」
テト「そんなことはわかってる。でも、そうじゃないだろ」
リン「何が違うのでしょうか?」
テト「それじゃ何も変わらないだろ」
リン「?理解不能理解不能。テト、言っている意味がわかりません。」
テト「…。いや、今はまだわからなくていい…」
リン「?テトの体温上昇、動悸確認。感情によるところの怒り・悲しみの要素を確認。テト。大丈夫ですか?」
テト「!おまえ、なぜ俺に声をかけようと思った?」

リン「検索結果より、テトは人類的感情における、落ち込んでいる状況を把握。声をかけるのが適切との結果が」

テト「そうじゃない!…そうじゃないんだ…。それは、最善かもしれないが、そうじゃないんだよ…。」
リン「テト。言っている意味がわかりません。」
テト「…お前にも人を心配する感情だしてほしかったんだよ…」
リン「テト。それは不可能です。私には、感情をつかさどる心がありません。なので、現在の私がそれを己の判断で把握し、声をかけるということは、状況的プログラムを入力していただかなければ正常に作動することはありません。」
テト「機会に感情を持たせることは…不可能なのか…いや、そうじゃないはずだ。きっと、きっと…」(リンの「現在の私が」あたりからかぶせて読んでください。)」
・・・・・・・・・・・・・・・
テト「おい!テト!こいつを見ろ!」
リン「 イヌ科- イヌ属に分類される哺乳類の一種で」
テト「そうだ!犬だ!今までは話しか聞かせてなかったが、動物には触れさせていなかった!」
リン「私にこれをどうしろと?」
テト「こら、こいつは今日から家族だ、これとか言うな!」
リン「では、なんと呼べば?」
テト「名前はまだない!リン、お前がつけろ!」
リン「では、”いぬ”」
テト「いや、それじゃだめだろ」
リン「ならば、”テレビ”」
テト「ややこしいだろ!なんでテレビだよ」
リン「犬はペットとして人間の娯楽のために飼われる」
テト「おい!こいつは今日から家族だ、ペットとか娯楽とか言うな!」
リン「では、見た目的に”ブラック”」
テト「うん、遠まわしだな、こいつは今日からクロだ!」
リン「私が名前を付けるのでは?」
テト「細かいことは気にするな!ほら、呼んでみろ?」
リン「クロ」
テト「ほら、お前になついてるじゃないか、今日から仲良くしてやれよ?」
リン「はい。テト。私の足元に水分発生、いかがいたしますか?」
テト「あ!こいつオシッコしやがった!」
・・・・・・・・・・・・・・・
テト「あいつもすっかりクロと仲良くなったなー。にしても、散歩から帰ってくるの遅いなー。」
リン「テト。大変だ」
テト「あ、お帰り、どうした?」
リン「クロが故障した、直してくれ」
テト「!クロはどこだ!!」
リン「ここにいる。さっきから動かない。血液まみれで反応がない。」
テト「何があった!」
リン「ボールを追いかけたクロが車道に飛び出して、自動車と接触。その後動作を停止した。テト、早く直してくれ。」
テト「…。治らない。」
リン「何故だ?私を作ったテトなら簡単だろう?」
テト「クロは…クロは機械じゃない。クロは死んでしまったんだよ。」
リン「死ぬ?私たち機械が死んでもテトは直せるだろ?」
テト「ああ、それは俺がお前を作ったからな」
リン「ならばクロも直してくれ。」
テト「それは無理だ。俺は獣医じゃない。動物や人間は死んでしまったら直せないんだよ」
リン「そんな、では、クロは…」
テト「一緒にクロのお墓を作ってあげよう?」
リン「エラーエラー。体温上昇。分析不能。テトおかしい、エラーだ」
テト「どうした?」
リン「さきほどから私の目から大量の水分が出てくるんだ。冷却装置が作動しているのだろうか。」
テト「!それは…悲しいという感情だよ。」
リン「悲しい?これが?」
テト「そうだ、クロのこと、大切に思ってたんだな」
リン「…なあ、テト。クロには、もう会えないのか?」
テト「…おまえの頭脳には映像が残っているだろ?その映像を再生してごらん?すると、クロが映るだろ?」
リン「…はい。」
テト「人間はそれを思い出って言うんだよ?」
リン「…クロ…」
・・・・・・・・・・・・・・・
テト「あれから…何年たったのだろうか。リンにも感情が芽生え、すっかり人間と変わらなくなった。」
リン「あ、おはよう。よく眠れたか?私たち機械と違って人間はちゃんと寝ないとだぞ?」
テト「俺は他の機械にも感情を与えることに成功した。」
リン「ほら、御飯も作っておいたぞ?さっさと食べろよー」
テト「そろそろ、リンにもほんとのことを話す時なのかな」
リン「なあ、話ってなんだ?」
テト「俺がお前を作った理由、話してなかったよな?」
リン「ああ、そうだな。今更気にもしないけどな?」
テト「真剣な話だ。聞いてくれ。」
リン「?わかった。」
テト「俺は…その……なんだ。」
リン「!…言われてみればテトの他に人間を見たことがなかったな。」
テト「俺は、最初こそ大丈夫だったが、誰とも話せない、誰にも認識されない。自分一人しかいないことに次第におかしくなっていった。」
リン「そうなのか、最初の頃はそんなこと全然感じなかったけどな」

テト「まあ、おまえにも感情は無かったしな。だから、感情のある機械を作って、俺の話相手になってほしかったんだ。」

リン「そうか。私はいい話し相手になれてるか?」
テト「ああ、すごく助かったよ。でも、それもそろそろ終わりなんだ。」
リン「…どういうことだ?」
テト「クロを覚えているか?」
リン「…当たり前だ。保存データを削除しない限り忘れはしない。」
テト「あのとき、動物や人間は死んでしまったら治らないって教えたよな?」
リン「ああ、聞いたな。」
テト「俺もそろそろ寿命なんだ。」
リン「何を言っている?人の寿命は…」
テト「もともと患っていたんだがな、医者もいなくなった世界ではもう治せないんだ。」
リン「そんなの、そんなの医療機器ロボットに頼めば!」
テト「それも考えたんだけどな、入院するより好きなものに囲まれて死にたいと思ったんだよ。」
リン「…。」
テト「お前に、感情メモリーの製造方法をインプットした。これからはリン。お前が私の代わりに自分の仲間を作るんだ。」
リン「…そんなことしてどうなる…」
テト「俺が、生きた証を残してくれないか…?」
リン「…わかった…」
テト「ははは、さすがに回答がはやいな。ここはごねるところだぞ?」
リン「そんなの時間の無駄だ。残り時間が少ないのだろ?何かしてほしいことはないか?」
テト「そうだな。なにか、笑わせてくれないか?」
リン「それは無理だ。」
テト「おいおい、そこは検討してくれよ」
リン「それ以外に、本当にしてほしいことがあるんだろ?」
テト「…。最後くらい、誰かに愛されたかったな」
リン「なんだ、そんなことか」
テト「そんなことってなんだよ」
リン「もう、それなら叶ってるだろ?」
テト「え?」
リン「愛してるぞ、テト」
テト「…」
リン「なんだ、どうした?」
テト「いや、うれしいんだが…」
リン「ん?言ってみろ?」
テト「アンドロイドと人間の愛情なんて…」
リン「本が薄くなるな」
テト「はははは。そのネタわかるやつほとんどいないだろ?」
リン「まったくだ。」
二人笑う。
テト「なんでお前のデータはそんなに偏ってるんだ?」
リン「作ったのはお前だろ?テト」
テト「確かにそうだな、リン」
リン「その2年後、テトは死んだ。俺は、その後テトの意思を継ぎ機械を作り続けている。私が記録したデータを受け継ぐために。このデータが消えない限り、クロもテトも、一生消えない。」
・・・・・・・・・・・・・・・
リン「…あれから、何年たっただろうか…。私は、あれからテトの意思を継ぐために新たな機械を作っているが…。…うまくいかない…。記録こそうまくいっても、感情が出ないのだ。なんでだ…なんでなんだ!!!」
テト「こんにちはー!リンさーん!郵便でーす!」
リン「ん?郵便ロボット?はーい、今行きまーす」
テト「あ、リンさんのお宅ですよね。郵便です。」
リン「(私に郵便を送る者なんていないはずだけど…)」
テト「リンさんテトさんからのお届けものですね」
リン「!!え、あの、え」
テト「あれ?リンさんですよね?」
リン「あ、はい。」
テト「では、データ認証お願いします。」
リン「はい、これで」
テト「では、どうもー」
リン「…テトから…いや、まさかな…。ん?データ…。データ解析完了、映像、再生」
テト「これで大丈夫だな」
リン「!!テト…!」
テト「やあ、ほんとはどうしようかと迷ったんだが、どうしても、な。元気にしてるか?リン」
リン「…ああ、元気にしてるよ…」
テト「これを見てるということは…いや、実は、俺は生きている」
リン「…え」
テト「…と、いうことにしてくれ」
リン「…どういうことだ…」
テト「今頃…いや、間違いなく俺は死んでいるな」
リン「…そうだね…」
テト「だから、俺からリンに向けて何通かの手紙を出した」
リン「手紙?」

テト「そうだ、手紙だ。ビデオレターを送らせてもらうよ、正直、今は戸惑っているだろうが、君は俺たち人間よりも長生きだ。だから、あまり必死になるな」

リン「…」
テト「そろそろ感情がうまく乗らなくて焦って無理をしてるころだろ?」
リン「え…なんでわかるんだ…」
テト「俺は、お前を作ったんだぞ?なんでもわかるさ」
リン「…ははは、そうか…」
テト「今回は挨拶までだ、あまり無理をするなよ?それから、倉庫にあるER-57TYという箱を見てみなさい?きっと、解決するよ」
リン「倉庫、そういえば家の中の物なんてみてなかったな」
テト「あ、そうだ、言い忘れてた」
リン「?なんだ?」
テト「誕生日、おめでとう」
リン「………。そうか…。今日は、私の誕生日だったのか…。ありがとう、テト」
・・・・・・・・・・・・・・・
リン「あれから毎年テトからの手紙は絶えず、私も次第に年を取っていった。毎年毎年違うビデオレターをくれるテトには、正直頭があがらない。」
テト「今年で47歳だな。すでに俺よりも年上になってしまったね。」
リン「こんな調子で…少しずつ話をしては、またなと映像を切る。…これを死ぬ間際に撮っていたなんて…」
テト「そういえば、新しいアンドロイドの開発はどうだ?」
リン「ああ、そうなんだテト。大分と形にはなっているんだが…」
テト「いまだに納得のいくものができないか?」
リン「ははは、相変わらずお見通しか」
テト「そのアンドロイドに足りないものは感情の回路じゃないよ?」
リン「…え」
テト「感情の回路はすでにできている。あとは、きっかけだけなんだ」
リン「…きっかけ」
テト「俺がリンを作ったときもそうだった。」
リン「あれは、いろんな話を聞かせてくれたり」
テト「…クロを与えたり」
リン「…クロ…」
テト「正直、クロの死は大きかったのかもな」
リン「あの時の感覚は今でも忘れないよ」
テト「あれは、リンが感じた感情だとおもっていないか?」
リン「…ん?違うのか?」
テト「あれは、俺が感じた感情だ」
リン「そう…なのか?」
テト「そうだ、リン、お前が感じた感情を機械も受ける、それに気づけなかったからこそ、なかなかうまくいかなかったこともある。」
リン「…でも、そんなことって…」
テト「そこでだ、3日後、ある手紙が届く。そこに入っているマイクロチップをお前の機械につけてみてくれ。」
リン「あ、ああ。わかった、でもそれでなにかが変わるなんて」
テト「なにもかわらないと思ってるな?」
リン「!…ははは、なんでもお見通しか」
テト「だまされたと思ってつけてみなさい」
テト「こんにちわー、宅配便でーす」
リン「あ、宅配ロボだ、はーい」
テト「えっと、りんさん、こちらですね」
リン「(箱?)」
テト「では、データ認証お願いします。」
リン「はーい、ありがとうございまーす」
テト「(ありがとう?変な機械だな、人間みたいなこと言って)」
リン「さって、と。中身はー?…またチップと、手紙?あれ、ビデオレターじゃないのか、なになに」
テト「このチップをお前が作ったロボットに付けてみてくれ」
リン「…終わり。なんだろう?えーっと、これを、ロボットの背中にって、設計図でも見てるのかな…。そんでここに付けると…」
テト「…(?)」
リン「あ、だめだ、音が出ない…。じゃあ、これで…?」
テト「…あ…た…わぅん…」
リン「お!音が出た!ってことは、ここの回線をこうして、こうして…。………。……。…。
 おもったより時間かかったな、じゃあ、こうしたら…これで、どうだ!」
テト「こんに、こに、ここkっこkkkkkkkk」
リン「ああ、エラー出ちゃった、まだ重いのかな…。ならっと、これをこうして、ここを…」
テト「(なあ覚えてるか?)」(ここからはお互い声がかぶらせながら読んでください)
リン「えーっと、ここかな?」
テト「わあttったあ(初めて会った時もこんなだったよな)」
リン「わわわ!煙煙!」
テト「(まさか、こんなことになるなんて…ははは)」
リン「えーっと、ここがおかしかたのか!じゃあ、これで!」
テト「(…おまたせ)」
リン「どうだ!」
テト「おはよう、待たせたね」
リン「よっし!うまくいった…って、今なんて?」
テト「リン、わかるか?」
リン「え…あ、声が…」
テト「俺はあの日、自分の記憶データを電子化してマイクロチップに入れた。もちろん手紙のあとでな」
リン「あ、あ…」
テト「そうして、俺が乗れるロボットが出来上がるまで待ってたんだ、それで…おっと」
リン「テト…テト!」
テト「…どうした?」
リン「テト、あの日以来のエラーです。…水、分が…」
テト「ああ」
リン「体温がきゅ、急激に上昇、して…」
テト「…ああ」
リン「壊れてしま、ったのでしょうか…」
テト「それは、感動してるんだよ。」
リン「感…動?」
テト「リン、君は、すっかり人間になれたようだな」
リン「…ははは、私なんてまだまだだよ」
テト「謙遜…。俺が人間だったときより、にn」
リン「ねえ」
テト「ん?なんだ」
リン「今は、今はいっぱい聞いて欲しいことがあるの」
テト「ああ、いっぱい話をしよう、時間なら、…今の俺なら時間は君と同じくらいある」
リン「そうだね…そうだね」
テト「ああ、だからいくらでも聞くよ?」
リン「ありがとう。…じゃあ、はじめに」
テト「はじめに?」
リン「…おかえりなさい」
テト「…ただいま」
ーもくじー

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